<室﨑益輝のつぶやき>

【四川大地震について】

 大災害が起こるたびに思うことだが、被災者の声に真摯に耳を傾けること、素直な気持ちで被災の現実に対峙すること、が欠かせない。予断あるいは先入観で「現場」を見ることを厳に慎まなければならない、と思う。四川大地震のメディアの報道や専門家のコメントを聞いていて、偏見によって真実を見誤っているのではないかと思うことが多い。「手抜き工事をしているから建物が崩壊した」「防災体制が不十分だから初動に失敗した」「閉鎖的な体質があるから受け入れを拒否した」・・等の見解がそうである。しかし、こうした見解は「百害あって一利なし」と思う。というのも、阪神大震災の時も同じような偏見に基づく評論を耳にし、辟易としたことがあったからである。阪神の時は、「防災意識が低いから初期消火をしなかった」「経済優先の都市経営ゆえに防災の手を抜いた」・・等の見解である。こうした見解の裏には、日本は確りしている、東京は神戸とは違う、といった奢りがある、と思わざるを得ない。今私たちがなすべきことは、あれこれと評論することではなく、第1に、被災者の声に真摯に耳を傾け、被災地のニーズを正しく捉えるように努めること、第2に、被災の現実と被災地の活動から学んで、わが国の防災への教訓を確り引き出すこと、である。特に後者の教訓ということでは、山林の保全が疎かにされていたために地滑りを招いたということや、耐震補強が不十分であったために倒壊を招いたということは、わが国も全く同じ状態であって、他山の石として受け止めなければならない。

2008年5月20日

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