<室﨑益輝のつぶやき>
【失敗の経験も伝えよう】
四川大地震の被災地への支援が、わが国においても多方面から積極的に展開されている。義援金などの金銭的支援はもとより、医療チームなどによる人的支援、さらにはテントや医薬品などの物資的支援も、ようやく軌道に乗りつつある。これらの支援に加えて、阪神・淡路大震災などの被災や復興の体験や教訓をしっかり伝えることも、支援として欠かせない。さて、この体験発信の支援が、被災地であった兵庫県や新潟県の自治体関係者や中国留学生などによって、行われつつある。発信された被災者の心のケアのノウハウなどが既に役立っているとの報告もある。ところで、この情報支援では、震災復興計画の内容やケアのマニュアルなどのドキュメントをそのまま送りがちであるが、どこが良くてどこが悪かったかというコメントも付けて、送らねばならないと思う。とりわけ、失敗したことや不十分だった点については、率直に伝える必要がある。大規模な仮設住宅団地をつくったあまりにコミュニティの崩壊を招いたことや、被災後の健康ケアや見守りが不十分だったために関連死の多発を招いたこと、住宅再建の公的支援が不十分で地域経済の立ち直りが遅れたこと、復興計画ではメニューを並べ立てただけで戦略が欠けていたので環境共生などの大切な課題をやり残したことなどを、反省点を明記して謙虚に伝えることが欠かせない。中国でもおなじ過ちを繰り返さないために、である。ドキュメントを受け取った中国の友人の「日本の素晴らしい復興計画を拝見して感動しています。日本の計画を参考に復興計画を立てるようにします。」というコメントをみて、無闇にそして自慢げに情報を発信することの危うさを、痛感している。微妙な情報の伝授は、顔の見える信頼できる関係性のもとでの、真摯に向き合ったコミュニケーションによってしか、成しえない。こちらから中国にいけないとしたら、こちらに中国の専門家を招いてでも、情報交換をしなければと「焦り」を感じている。
2008年6月2日